レーティング規程改定および国内レーティング調整

10月1日付で、日本チェス連盟レーティング規程の大幅な改定と国内レーティングの一斉調整を行います。国内レーティングが実力よりも低く算出される、いわゆるアンダーレーテッド問題が昨今深刻化しています。この問題に根本的に対処することが今回の規程改定と一斉調整の主な目的です。またこれに付随して、国内レーティングとFIDEレーティングの乖離が拡大している問題にも対処します。

規程の改定は読みやすさ改善のため章立てから見直しを行っており、大小様々な修正があります。こちらのお知らせでは、重要な変更点を以下にまとめます。

(10月1日追記:レーティング規程を改定しました)

重要な変更1 初期レーティングの決定方法

アンダーレーテッド問題の大きな原因の一つとして、初期レーティングの決定方法が挙げられます。決定方法について、以下の変更を行います。

  • 初期レーティング決定までに必要な通算対局数を「4」から「6」に引き上げる
  • レーティングを持たない相手(UR)との対局をレーティング1000との対局として扱わず、レーティングを持つ相手との対局のみから初期レーティングを算出する
  • 初期レーティングの算出にはFIDE Initial Rating Calculatorではなく、パフォーマンスレーティングを用いる

 

これらの変更により、これからレーティングを獲得するプレーヤーの初期レーティングが、より高い精度で実力に近くなるようにし、アンダーレーテッド問題に対処します。

重要な変更2 レーティングスケールの調整と国内レーティングの一斉調整

図1:レーティングが高い方のプレーヤーが獲得したポイントの平均

 

図1が示す通り、レーティングシステムが理論的に与える期待値と、国内公式戦で実際に獲得したポイントの平均には開きがありました。そこで国内レーティングの下限を400から1000に引き上げ、レーティングのスケールを縮める変更を行います。この変更に合わせて、国内レーティングが400以上2000以下であるプレーヤーに対し、以下の式によって一斉調整を行います。(小数点以下は四捨五入)

Rn = Ro + (2000-Ro)*(3/8)

  • Rn: 調整後のレーティング
  • Ro: 調整前のレーティング

 

この調整は10月1日発表予定のレーティングに対して行い、調整後のレーティングリストを2024年10月度レーティングとして公開します。

図2:一斉調整を行った場合の獲得ポイントの平均シミュレーション

 

下限の引き上げと一斉調整によって、図2が示す通りレーティング差から計算される期待値と実際の獲得ポイントの平均を近付けます。加えて、国内レーティングとFIDEレーティングの乖離が拡大している問題にも副次的に対応します。国内レーティングとFIDEレーティングは異なるレーティングであるため、必ずしも一致させる必要はありませんが、FIDEレーティングのみを持つプレーヤーが国内公式戦でプレーする際にFIDEレーティングを引用しますので、乖離を小さくするように努めます。

※FIDEレーティングは下限1400

重要な変更3 K=40となる期間の変更

実力に近い初期レーティングを獲得したとしても、初期レーティング獲得直後のプレーヤーや、ユースプレーヤーは実力が急速に向上することがよく起こります。そこで、レーティング変動幅のパラメータとなっている変動係数Kが、通常の20ではなく40となる期間を以下の通り変更します。

  • 通算対局数「18未満」から「30未満」に延長
  • 「18歳未満かつレーティング2300未満」から「19歳未満かつレーティング2000以上になったことがない場合」に変更

 

この変更によって、レーティングの伸びが実力の向上に追いつくようにします。

その他の重要な変更

レーティングそのものに関する変更ではありませんが、今回の規程改定で以下の変更も行われます。まず、これまでは公式戦を開催できるのは連盟または公認クラブとしていましたが、学生チェス連盟加盟サークルにも公式戦の開催を認めます。

一方、意図的に特定の公式戦の結果を報告しない等の不正やクラブ・サークルからの報告漏れ、連盟の算入漏れを防止する観点で、以下について明文化します。

  • 公式戦を開催する場合は、開催5日前までに連盟に申請を行うこと
  • 主催者は開催したすべての公式戦の対局を連盟に報告すること
  • 公正な運営でない等、公式戦として不適切である場合はレーティングの計算対象とならないことがあること

※開催申請の方法はクラブリーダー、サークルリーダーに別途ご連絡します

 

以上の変更により、国内レーティングがプレーヤーの実力をより正確に反映し、プレーヤーのモチベーション向上に繋がることを期待します。また、公正な形での公式戦が活性化されることを期待します。

 

上記変更点を含むすべての変更点については、下記対照表をご参照ください。

レーティング規程改定対照表